それを食べてしまう有馬は、普通の人じゃないってこと?
気になるのに、聞けない。
異様なものを見た自覚があるから、真実を聞くのがこわかった。
「大崎さん」
背中に声がかかり、ハッとして振り返る。
そういえば、柳瀬くんが一緒だったんだ。
すっかり存在を忘れていた。
窓のない薄暗い廊下に立つ柳瀬くんは、大柄なのもあってまるで壁みたいだ。
けれど人好きのする笑顔を浮かべる彼は、圧を感じさせることがない。
わたしも安心して「なに?」と柳瀬くんの高いところにある顔を見上げた。
「俺の勘ちがいだったら悪いんだけど……。大崎さんて、有馬のこと嫌いなの?」
「え……。どうして?」
「なんとなく。さっきの会話聞いててそう思ったんだけど、ちがう?」
柳瀬くんの声には、責めるような色はないようだった。
どうしようか迷う。
彼は有馬の友だちで、小学生の頃からの長い付き合いだ。
そんな相手に、自分の気持ちを正直に話してもいいものだろうか。


