しかめっ面の教頭先生、あくびをしている体育教師、煙草くさい疲れ顔の社会教師……。
「教……」
「うん?」
「いえ……ええと、あ。公務員がいいかな。公務員にします」
うっかり教師と言いかけて、慌てて言葉を飲みこんだ。
教師なんて大変そうな仕事は、わたしには無理だ。
たくさんの生徒と一生向き合っていかなくちゃならない。
なるべく人と関わっていたくないわたしに、出来るような仕事じゃなかった。
「大崎、お前なあ。それ、いま思いついただろう」
「そんなことは……。でもいいと思って、公務員」
「お前の言う公務員って何だ?」
「えっ。……市役所で事務みたいな仕事をする人?」
わたしの答えに、やれやれと先生は首を振って、進路調査票をつき返してきた。
「公務員にも色々ある。せめてそれを調べてから、その欄全部埋めて持って来なさい」
「……はーい」
面倒だなあと思いながら、仕方なくプリントを受け取る。
先生はもう用は済んだとばかりに次の授業の用意をし始めた。
戻ってきた進路希望調査票には、苦い匂いがかすかに移っていた。


