それを知ったのは偶然の出来事だった。
夜、目が覚めてしまい侍女たちを起こすのも悪いと思って1人で中庭に行こうと思った矢先、父の執務室から明かりが漏れているのに気がついた。

その時深夜をとうに過ぎていたのに仕事をし続けるなんて素晴らしいことだと思った。
中庭に行くには執務室の前を通らなければいけない。仕事中の父の邪魔にならないようそっと通り過ぎようとした。

父の執務室からは話し声が漏れ出ていた。なるほど、補佐で執事のセバスチャンもいるのか。
いや、違う。セバスチャンの声はもっと高い。この感じは…下賤の者か?

なぜ下賤の者が?リディウス家は建国当初からある由緒正しいお家だ。平民階級の者がやすやすと入ることができるようなものではない。
不審感が勝り、下品にも耳を扉に近づけ中の話を聞いてみた。

中では、信じられない。いや、信じたくないような会話がなされていた。