ちょっと、軽い深呼吸をしてクローゼットを開く。
そこにあったのは、綺麗系の服とカジュアル系と可愛い感じの部屋着に、下着の替えが数点入っていた。

有希子チョイスは、どの系統でも私の好みを熟知してて選んでくれてるから、抵抗なく着られそう。
ちゃんと考えてくれたのか、必要だろう最低限の数しかない。
ホッと胸を撫で下ろす。

「色々用意してあげてくださいと言ったはずなんですが、少ないですね?これでは足りないでしょう?」

私がクローゼットを見ている後ろから覗いているのか、耳元でそんなことを言われてはなにかが切れてしまいそうだ。

「十分足りてます。ここにいる期間、着替えに困らないくらいに揃っています。だから追加は要りませんよ!」
「そうですか……。僕も莉々花に似合う服を合わせて着せたかったんですが。莉々花にそう言われては仕方ないですね…」

そんな事を、まぁ、その綺麗な顔で甘く囁くのだから。
これはある意味美形を使った凶器みたいだ。
その言葉、表情全てが私の胸に突き刺さって抜けない。
どんどん侵食されていく。
それを嫌だと感じず、むしろ居心地良く感じるなんて。

そんな、恋にも異性からのアプローチにも慣れない私が、いきなりイケメン御曹司とあまりにも甘くて、体験したことのない期間限定居候生活の日々のスタートをきった。