最初の挨拶を済ませてすぐに、その秘書に思わず言ってしまった。
愛しい彼女へと橋渡しをしてくれないかと。

すると、新しい秘書の有坂さんは、それは怒りグループ秘書に戻すように言われて我に返り反省した。

それで、失言だった旨の謝罪をして坪内の結婚と奥さんの出産の備えての増員であることを説明して納得してもらった。

そこから、なぜかさらに過密スケジュールになり思わず、訊ねる。

「有坂さん、このスケジュールに作為を感じるんですが？」
「さすがですね、副社長。いま、莉ヶ花も新しいところに異動したてで大変なんです。少しくらいお待ちになったらいかがです？」

まさか、彼女が莉ヶ花に甘く、保護者のようにその他大勢の男性社員から遠ざけていたと知るには時間はさほどかからなかった。

「有坂さん、清水さんは知ってるの？」

僕自身もここまでまさか他人にガードを固められているなんて思っていなくて、とても歯がゆい日々を過ごして、春の牽制から三ヶ月。
季節は移ろい、そろそろ夏になろうとしていた。

「それは言わないでしょう？お節介なのは承知してますが、莉ヶ花は仕事を離れれば危なっかしいので近寄る異性は吟味しとくに越したことはないかなって思いまして」

そう、さらっと返された。

「さすがにそろそろいいだろう？」

我慢の限界で凄味が入ったのは、仕方ないだろう。