そんな会話をして、社食を出るとき

「多少美人だからって、副社長に声掛けられて調子に乗らないことね」

すれ違い様にボソッと耳元で言われた言葉。

振り返れば、そこには秘書課の綺麗所と言われるお姉さま集団がいた。
うん、圧がすごいわ。
クスクスとその周りも笑ってる。
大人になっても変わらない人っているんだな。

「杉原さん、髪型もメイクも崩れてますよ?」

さらっと、毒吐いたのは有希子だ。

「有坂さん?!あなたその態度はなに?!」

きっと隣にいた有希子にも聞こえていたんだろう。
それ故の毒だ。
有希子は曲がったことや、陰湿なことが嫌いだから。

「有希子、ありがとう。でも大丈夫だよ?」
「杉原さん、ご忠告ありがとうございます。しかし杉原さんが思うような出来事はもうないでしょうから、私なんか相手にせずにご自身が思うようになされば良いかと。では失礼します」

そう言って私達は社食を後にした。

「莉々花、本当に何かあったらすぐに言いなさいよ?」

そう言って、有希子は上りのエレベーターに乗っていった。
私と志帆さんは下りで受付の階へと戻った。

そこから一時間後、パタパタと騒がしい足音と共に慌てたような表情を浮かべた副社長が受付へとやって来た。