“…ス……、アリス……”


どこからか、私の名前を呼ぶ声がする。

ぼんやりとした意識の中、私はその声に導かれるように呼吸をした。


「アリス…!!」


「…!」


ふっ、と目を開けると、そこに見えたのはローズピンクの瞳。

体はずぶ濡れで、ネコミミのフードから雨の雫が滴っている。


(…チェシャ……?)


私と目があった瞬間。

チェシャはほっ、としたように体の力を抜いた。

私を抱きかかえる彼の体は傷だらけだ。


「…アリス……」


掠れた声で名前を呼ばれた。

私は、そっ、と彼の頰を撫でる。


「…チェシャ……、無事だったんだね……!」


「!」


「…よかった……」


私がそう呟いた。

その時だった。


ぎゅう……っ!!


(!)


強く、強く抱きしめられた。

戸惑うまま、彼に身を任せる。


「チェ…シャ…?」


彼の名を口にした瞬間。

耳元で彼の掠れた声が聞こえた。


「…ごめん…なさい………!」


(え…?)