《オズside》


…たっ、たっ、たっ…


体がだるい。

頭が重い。

だが、走らずにはいられなかった。

脳裏に浮かぶのは、銀髪の少女。


(あいつ、“笛が手に入る”と聞いたらどんな無謀なことでもやりかねないからな。…まぁ、それは俺も同じだけど…)


何故だか分からないが、あの子が気になってしょうがない。

危なっかしくて目が離せない。


…いや、気になる理由は分かっている。


(俺が探している“あの子”に、どこか似ているせいだ。)


視界が熱でぼうっ、とする中、走っていると、やがて目の前に鬱蒼とした森が見えてきた。


(あれが、“不思議の森”か…?)


眉を寄せて木々を視界に捉えた

その時だった。


フッ…!


森の入り口に、見慣れた尻尾の少年が現れた。

俺は、彼の姿を見た瞬間に声をかける。


「チェシャ!」


「!」


彼は、ぴくっ!と驚いたように肩を震わせた。

俺を見たチェシャは、どこかぎこちなく口を開く。


「あれ、オズ。風邪で寝込んでるんじゃなかったの?」


「そうだよ。俺は今にでもぶっ倒れそう…、って、そんなことを言ってる場合じゃない!」