「そのお金って、どこから来たの?…まさか、またシンデレラの魔法でコピーしたんじゃないよね…?」


「まさかぁ。いくら僕でも、2日連続で悪事は働かないよ。」


「じゃあ、一体どうやって…?」


どこか嫌な予感がして眉を寄せると、ウサギさんは悪びれもせずにさらり、と言い放った。


「ん?“金の笛”を換金してきたんだよ。いやぁ、結構儲かるもんだね。」


「それ、私のリコーダー!!!!」


私の怒号が空に響き渡った。

この男、私が湖の女神から受け取った笛を、勝手に売り飛ばして来たようだ。


(どこが臨時収入?!いや、確かに偽物だった笛は使い道ないけど…!)


くすくすと笑う彼は、紙袋を抱えながら私に言う。


「そんな怒らないでよ。さ、お茶会しよう!アリスの分のスコーンと紅茶も買ってきたんだ。」


(黒ウサギにうまく乗せられてる気がする…)


いけしゃあしゃあと家の中に入って行く彼の背中に、私は複雑な視線を向けた。


…こうして、私の不思議の国での生活が幕を開けたのです。



第1章*終