と、その時だった。
「あれ、アリス?」
「!!!」
聞き慣れた声に、びくん!と体が跳ねた。
オズが消えて行った道とは反対方向の森から、白い髪の青年が現れる。
「う、ウサギさん…!」
「おはよう、アリス。」
にこりと私に笑いかけた彼は、私にゆっくり近づいて口を開く。
「こんなところで何やってるんだい?」
「ええっと…」
(オズのことをバラすわけにはいかないよね…)
「ちょっと、外の空気を吸いたくて!ほら、新聞を取るがてら!」
「?そう。新聞なら、今朝僕が取っておいたよ。テーブルの上になかった?」
「あっ!そうだったんだ?気付かなかった!」
ウサギさんは相変わらずニコニコしている。
どうやら、何とか誤魔化せたようだ。
その時、私は彼が腕に大きな紙袋を持っていることに気づく。
「ウサギさんこそ、何してたの?すごい荷物だけど…」
「あぁ、これかい?楽しくて少し買いすぎちゃった。」
ちらり、と紙袋を覗くと、確かに彼の言う通りパンや野菜、果物に加え、一体何に使うんだろうと思うレベルの“子ども向けのおもちゃやガラクタ”が入っていた。
「ウサギさん、これ全部買ってきたの?」
「うんっ!“臨時収入”があったからね。」
(“臨時収入”…?)