“まさか、エロいことなのか…?”と言わんばかりの視線をこちらに向ける彼。

まぁ、“規制がかかる”という点では違いない。

ここで笛に問えないのは当然だ。

私が笛に問いたいのは、“人間界への帰り方”なのだから。

不思議の国の住人である彼の前で聞くことなんて出来ない。

彼との間に若干の誤解が生じている気がするが、そんなことはもうどうでもいい。


「助けてくれてありがとう。あなたの命まで危険に晒したことは申し訳なく思ってるわ。っ、でも、私の質問だけは聞かせられないの…!」


「…っ、別に俺は、あんたがどんなヤバいことを笛に聞いても引いたりしないって…!人に言えない悩みとかがあるんだろうけどさ…」


「ご、誤解だってば!!」


私が必死に弁解した

その時だった。


ピリリリッ!ピリリリッ!


青年のポケットから、小さな音が聞こえた。

はっ!とした彼は、ポケットから“通信機”を取り出す。

ピッ!と通話ボタンを押した瞬間。

向こうから男の人らしき声が響いた。


『あっ、“オズ”!もー、やっと出た…っ!連絡つかなくて心配してたんだよ…?』


「あぁ、悪いな“シラユキ”。通信機が水に濡れたせいで壊れかけたみたいだ。」


どうやら、仲間からの連絡のようだ。

私はそれを聞いてつい、呟く。


「?“オズ”?」


「…俺の名前だよ。」


自己紹介もしないまま事故に巻き込んでしまった彼の名前は“オズ”というらしい。

すると、私たちの会話が聞こえたのか、通信機の向こうから先ほどの男の人の声が聞こえた。


『えっ、オズ…、まさか、僕たちに黙って彼女と密会中?』


「違ぇよ、バカ。」