カンカンカン!!!


乾いた木槌の音が会場に響いた。

燕尾服の支配人がマイクを握る。


『ハンマープライスです!この“真実を歌う笛”は、見事、132番の方が今夜の最高金額で落札です!!』


ワァァァッ!!


会場中が熱気に包まれた。

沸き起こる歓声と拍手。

しかし、私の耳にはやけに遠くから響いているように聞こえた。


「…やっちゃったねえ、アリス?」


確信犯の笑みを浮かべるウサギさんに、私は意識が遠ざかっていくのを感じていた。



**



「いやー!あんなに分厚い札束を持ったのは久しぶりだよ。数年前にやった人生ゲーム以来だねえ。」


満足げに地下の廊下を歩くウサギさん。

…と、生気をなくした顔で歩く私。


(…ついにやってしまった…。いい子の道を踏み外したどころじゃない。外道中のクズ人間に成り下がってしまった…!)


「そんな顔してどうしたの、アリス?君のお目当てのお宝が手に入ったのに。」


「…ウサギさんはどうしてそんなにお気楽でいられるの…」


私は呑気に笑う彼を見て、罪悪感に潰されそうになっている自分がバカバカしくなってきた。

こうなったら、さっさと笛に人間界への帰り道を聞いて、罪が発覚する前に向こうに逃げてしまうのが得策かもしれない。

“ダイヤ偽装”の主犯は、私の隣にいるこの黒ウサギなのだから。