さらり、とそう言った彼に、全員が絶句する。

彼は、いつからこのシナリオを描いていたのだろうか。

すると、ウサギさんはにこりと笑って言葉を続けた。


「でも、アリスがトレメインを煽ってくれなかったら作戦は失敗していた。…トレメインがオズ君のダミーを取り込まなかったら、まとめて消すことすら出来ないからね。」


称賛の言葉に、つい恥ずかしくなる。

魔女と対峙した時は、彼女を怒らせることで頭がいっぱいだった。

無謀とも取れる発言を繰り返し、挙げ句の果てに偽物のオズの唇を奪ってみせた。


(…我ながら大胆だったけど、結果的には“キス”が効いたんだろうな。)


あの場面で、姿を消していた本物のオズがどんな顔をしていたか、私には想像もつかないが。

するとその時。

ウサギさんが小さく私に声をかけた。


「…アリス。君にご褒美をあげよう。」


「“ご褒美”?」


彼は、何を考えているのかわからないいつもの笑みでさらり、と告げた。


「僕についてくるんだ。…笛の代わりに、君の問いの答えをあげるよ。」


(え…?)


思わず目を見開くと、ウサギさんは無邪気にウインクしたのだった。