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「…ふぅ。」


やがて、光が消え去った。

ウサギさんが小さく息を吐く。

彼の桜色の瞳は、どこか悲しげで、空っぽで。

しかし、後悔など微塵もない綺麗な色をしていた。


「終わった…、のか…?」


オズが、ぽつり、と呟いた。


スゥ…ッ!


彼の体が、だんだんと人間の姿に戻っていく。


“この世からトレメインが消えた”


その実感が、ゆっくりと胸にこみ上げる。


「オズ君。」


ウサギさんが彼を呼んだ。

振り向くオズに、ウサギさんはいつもの笑みで言う。


「もう、契約は破棄された。…君は自由だ。」


(…!)


「オズーっ!」


その時、玉座の扉の向こうから2人組の青年が現れた。

安心したように表情を緩めるオズ。

こちらに駆け寄ってきたカグヤが、にやり、と笑って声をかけた。


「どうだ、俺の“催眠魔法”は?命のない人形が、完全にオズに見えただろ?」


私は、そんな彼に笑顔で答える。


「うん…!声はオズが姿を隠しながら言っていたとはいえ、受け答えも動きも完璧だったよ!」


「それは良かった。ただ、腕を切られた時は焦ったな。血が出てないのがバレたら終わりだった。」


その時、オズが眉を寄せて静かに呟く。


「それにしても…。トレメインを消すために、シンデレラの魔法の消滅を利用するとはな。」


すると、ウサギさんは「ふふ…」と笑って答えた。


「…僕は、ずっと機会を伺っていただけさ。実行するには、それなりの“タイミング”ってものがあるからね。」