(そうなんだ…。みんな、伯爵に見初められるのを期待してるってこと…?)


綺麗なメイクをして、ドレスを纏う女性達は、皆輝いて見える。

上品で優雅な立ち振る舞いに、ごくり、と喉が鳴った。

童話の世界に生きる女性と、人間界に住む私がかけ離れていることがひしひしと伝わってくる。


(…この中に、オズの初恋の人がいるのかな…)


広間の大きな窓ガラスに映る自分の姿を見ると、どきり、と胸が鳴った。

そこにいる“エラ”は、私であって私ではない。

もし、普通の女子高生の“アリス”が高価なドレスを着ていたら、せいぜい文化祭のコスプレのように見えるのだろう。


「…どうした、エラ?」


「!」


カグヤに、そっ、と声をかけられた。

はっ!と我に戻った私は、動揺を押し込めて答える。


「えっと…オズの探してる女の子は、ここにいるのかなって思って…」


すると、それを聞いたカグヤは、ふっ、と小さく微笑んだ。

きょとん。と、する私に、彼は小さく呟く。


「…なんだ。笛の在り処を気にしているのかと思ったら、オズのことを考えてたのか。」


(っ!)