(!)


重い蹴りが綺麗に入った。

呆気なく地面に倒された骸骨は、戦意を失ったかのように動かなくなる。

その光景を目の当たりにした野次馬たちも、はっ、と息を呑んで静まり返った。

青年が、ギロリと敵を睨んで口を開く。


「───ウチのをナンパするなら俺を通せ。失せろ。」


『!』


低くドスの効いた声。

びくり!と震える悪霊は、顔を歪めながらよたよたと去っていった。


(す、すごい…)


呆気にとられてまばたきをする私。


「エラ…!」


駆け寄って来たチェシャが、ばっ!と私に抱きついたその時。

ふぅ、と呼吸をしたシラユキくんが、苦笑しながら青年に声をかけた。


「ありがとう、“カグヤ”…!」


(“カグヤ”…?)


すると、藤色の髪の青年がわずかに口角を上げて答える。


「帰りが遅いから迎えに来てみれば…お前の不運はどうにかならねぇのか。」


「あはは、ごめんね!エラちゃんもいたから来てくれて助かったよ…!」