「エラ、見て!美味しそうでしょ!」


森での出来事から数日後。

うららかな陽気に包まれる公園で、チェシャがにこりと私に小さな袋を差し出す。


「わぁ、クッキーだ…!これ、チェシャが作ったの?」


「うん!エラにあげようと思って、頑張ったんだよ!」


私は「褒めて褒めて」とすり寄ったチェシャを優しく撫でる。

ごろごろと満足げに喉を鳴らす彼は、このようにすっかり私に心を開いたようで、いつも私の隣にいてくれるようになった。

優しいお日様の光が、ベンチに座る私たちに降り注いでいる。


(平和だなぁ…。あれから、笛の情報が何一つ手に入ってないのが悩みだけど…)


日向ぼっこをしてる場合ではないのだが、オズからの連絡もなく、私は思うように動けないでいた。

ふと、チェシャに話しかける。


「そういえば、最近ウサギさんを見ないけど、どこにいるのかな。」


「…!」


チェシャは、ぴくん、と尻尾を震わせた。

わずかに表情を曇らせた彼に、私は首を傾げる。


「チェシャ?」


「!あ、ごめん!…どこにいるんだろうね?僕にも分かんないや。」