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「ねぇ、ウサギ。エラは?」
「あぁ、オズくんの家に向かったよ。」
家のリビングでくつろぐウサギに、チェシャが尋ねた。
紅茶を飲みながら答えたウサギは、くすり、と笑ってチェシャに声をかける。
「彼女のこと、“エラ”と呼ぶようになったんだね。」
「…!」
チェシャは、その指摘にローズピンクの瞳を細める。
「うん。…あの子は、僕を大事にしてくれるから。ここにいる間は、エラって呼んでもいいかなと思って。」
「そっか。」
ウサギは、穏やかに呟いた。
ウサギの座るソファに腰掛けたチェシャ。
すると、ウサギが新聞を片手に口を開く。
「…チェシャ。もう、アリスを危険な目に合わせちゃいけないよ?」
「分かってるよ。もう絶対しない。」
チェシャの言葉に、目元を和らげたウサギ。
すると、チェシャは彼を見上げて小さく尋ねた。
「それにしても…ウサギがあの子にエラから預かった魔法を託すなんて驚いたよ。あの魔法は、ずっとウサギだけが持ってると思ってたのに。」
すると、ウサギはさらり、と答える。
「あぁ…。アリスには“利用価値”があるからね。」
「え…?」



