“夢”


誰だって、一度は見たことがある。

それは現実味が無いようで、不安定で、曖昧で。

優しくて、温かい、そんなものだ。


…あなたは知っていますか?


夢に全く知らない人が出てきた場合、自分では気づいていないけれど、一度はどこかですれ違った人なんだとか。

無意識のうちに、頭の中に記憶していた人物なんだとか。


…もしくは、自分では思い出せないほど幼い時に出会った、“記憶のカケラ”の住人だとか。


『久しぶりだね、アリス。僕のこと忘れちゃった?』


ぼやけた人物が、ひょっこりと顔を出す。

それは全く知らない人物なようで、どこか懐かしいようで。

キラキラと光に照らされる白い髪の毛が、ふわりと風になびいている。


(貴方は、誰…?)


心の中で問うと、目の前の彼は『嫌だなあ、友達の名前を忘れたの?』と、くすくす笑う。


『…“ウサギ”。それが僕の名前だよ。さ、今日は何をして遊ぼうか?』


差し出された手は雪のように白くて、長い指が綺麗で。

穏やかな声に、いつも心が安らいだ。


…すっ。


私は、そんな彼に手を伸ばし、指に触れる

次の瞬間。