君は一通りの事情を話終えると落ち着いてきたのか、何度も『ありがとう』と、言って笑った。

「無理すんな…。」
その時の俺にはそれしか言えなかった。
下手な同情も、がんばれと言うことも出来ない。

「私ね…いっくんがいてくれたおかげて、今まで頑張ってこれたんだと思う。リハビリしてる時は諦めそうになるけど、いつも樹くんが頑張りすぎるなって言ってくれる気がして、余計頑張っちゃうんだよね。」

「なんだよ。それ。俺が余計に頑張らせてんのかよ。」
俺は声を出して笑った。

「あ、初めて笑った。」
君も俺につられて笑う。

本当は君が1番辛い時期なのに…
「いつでも、愚痴っていいから。」

「ありがとう。看護師さんにバレちゃうからそろそろ行くね。」
君はスッキリした笑顔で俺に手を振る。