あぁ、頭痛がする



手で額を抑えながら、うつむいた。



「 美奈帆ちゃん、大丈夫かッ?? 」



私は、憎むべき相手と和やかに暮らしていた……。



陸くんは、女の子を口説くのが上手い



そう聞かされたら合点が行く。




振りだったからこそ、私が他の女の子のことで怒っていた時

自分のキャラを崩してまでして、私の機嫌を取り戻そうと必死になったのだ。




「 あぁ、大好きな美奈帆ちゃん。


時間がない、またすぐに会うことになるけど
今日はお別れだ 」



「 待って! 」


置いてかないで。


事実を知っていながら、陸くんのように演技できる自信がない



それに怖い。



そんな詐欺師みたいな人と、

しかも私の恋人を撃った人と一つ屋根の下で昨日と同じように寝るなんて……


「 いいか、美奈帆ちゃん。


陸は俺の親友であり、裏切り者だ。


俺はあいつを許さないし、お互いにお互いを憎んでもいる。


けど何も知らなかった美奈帆ちゃんは、陸のことを弟のように可愛がってた。



だから一応、陸も美奈帆ちゃんには危害を加えないだろうよ 」


そんなこと言われてもっっ。



連れてって欲しいと松の木の後ろに回るが、

誰もいない



それらしき人で周りにいるのは、小走りで海から離れて行く男の人の後ろ姿だけ



「 必ず迎えに行く!


だからどうか、すり替えられた恐怖心を正しい人物へと向けて欲しいっ。 」



待ってッ______



私から去って行く恋人の方へ腕を伸ばすけど、届くわけもなく



前にも、こんな事があった。




あの時も…………届かなかった。



涙が手の甲に落ち、一つの重い壁が壊れたように感じる



「美奈!!

誰と話してたっ??」



「 誰とも 」


あなたなんて、大嫌いッ


キツイ目で顔を真っ青にしてる陸くんを睨み見た。