記憶をなくしてるくせに、あいつの名字や
呼ばれ方だけは

本能的にあいつに反応する



どうして俺と一緒の家に暮らしていたのに

俺のことは忘れて、あいつのことは忘れてねぇんだ。



理不尽だろっ



「 それを聞くだけでビビるってことは、

俺たちの力を持ってしてもそいつが美奈に危害を加えたという証拠だ。」



「 はっ 」


美奈が短い息を吐き出す



「 仲間たちの監視から解いてやりたいが
できない理由が分かったか 」


「 …………… 」




「 あいつらだってな、毎日毎日何時間も

お前に危害を加える者がいないか見張ってて結構大変なんだぞ。」



こんなことわざわざ言わなくても、普通考えたら分かるだろ



「 …………………ごめんな、さい 」



胸がムカムカして、つい美奈の表情を確認せずに話してしまった。




ちらりと首を美奈の方に向けると、

泣いてるわけでもなく、美奈は視線をキョロキョロさせて何かやろうと考えているようだった。