涼太side



パタンと扉の閉める音を聴こえて俺は未だ憧れの人に向き直った。



少しの沈黙の時、最初に口を開いたのは昌彦さんだった。




「お前の言いたいことよくわかる」


やっぱり…


「お前が夏稀のことを特別な存在と思っていることは知っている。夏稀は同室を了解してくれたが、お前自身まだ納得はしてないのだろう」



親娘揃ってなんていう頭してんだ…



俺は否定しない。当たっているからだ。


実際、俺は夏稀のことを女として、恋愛対象としてみている。


だけど、年が離れているのもあるが、まず夏稀は俺を兄のように思っている。だから、俺は夏稀から少し離れた。


…けど、夏稀と今ここで再会した以上危険な目に合わせたくない。


俺は夏稀に降りかかった事件も理事長から聞いているし、もともと男が苦手なことも小さい頃から見ていた。



「だかな涼太。これは夏稀にとって必ず通る道だと思うんだ」



「ですが昌彦さん!生徒たちが夏稀の正体に気づいてしまったらどうするんですか!?」




「だからお前を呼んだのだ」



「!?」


いまいち言っていることがわからない。


「いいか、これから先は上司命令と思って聞け」



やっぱりこの人の威圧感には圧倒される。



「お前を早乙女夏稀の監視役に任命する。いわば、夏稀を守るための護衛だ」



「ご、護衛…?」


なんとも間抜けな声を出してしまった。


「夏稀は大事なところで超がつくほどの無自覚、鈍感だからな」


そこで一回、間を空けて、続けて言った。


「夏稀をここに連れてきた第一目的は異性との接触だ。それを邪魔しない程度で見守ってほしい」