夏稀side


突然ですが自己紹介です。
早乙女夏稀。15歳。今日から高校一年生。身長148センチ。体重は秘密です。あ、あと性別は“女”です。




朝、いつも通りの時間に起きると、お父さんから何故か制服を貰った。


「?…なにこれ?わたしの行く学校の制服じゃないけど…?」


「夏稀、お父さんが盟央高校の理事長っていうのは覚えてるね?」


「え?う、うん。覚えてるよ?」


「…非常に言いにくいことなんだが」



「????」


なんなんだろう?
やけに険しい顔してるけど。整った顔が台無しだよ?お父さん。





「実はな、今日から盟央高校に通ってもらう」





…え…?




「誰が…?」


「夏稀が」


「いつ…?」


「今日」


「どこに…?」


「盟央に」


「なんで…?」


「…………」


だって、だって、


「盟央って男子校でしょ…?」


「…そうだ」


「わ、わたし、これでも女だよ?」


「…知っている」


「それに、わたし、お、男の人む、無理だし…」


「あぁ、だから男子校に行って男嫌いを克服してほしいんだ」


「え?で、でも、そんな…。わたし、女だし…」



「まぁ“男子校に通う”ってところは学歴的にはなんの問題もないだろう」


「そ、そうだけど…。何の為に?」


「いずれお前は私の会社を継ぐことになる。だから異性と関わる必要があるだろう」


「だ、だからって。無理無理!わたし、やっていける自信ないし…」


「勿論、それは百も承知だ。だから、お前には男装をして盟央に通ってもらう」


えぇ?男装っていくらなんでも…。


「お前には今日からこの伊達眼鏡と、かつらをかぶってもらう」


そう言って、どこから出したのか渡されたのは、黒縁眼鏡と、ショートカットのこげ茶色のかつらだった。



「で、でもお父さん。男子校ってわたし、女一人だけだよね…?」



「大丈夫。涼太がいる」


あっそうか。涼ちゃん盟央の先生だったね。



「お前が男が苦手なことは私が一番よく解っているつもりだ。でもな、夏稀を政略結婚なんてさせたくないんだ」


「っ…!」


…お父さんがそういうなら…。


「わかった…。男子校に行って男の人といっぱいお話ししてくる」


「…そうか。ありがとうな、夏稀」


「お父さんがそうした方がいいって言うならなんでもいいよ?」


「…もし、自分じゃ解決できない事があったら、すぐに私か涼太に言うんだぞ」



「うん!わかった!」



「うん。我が娘ながら百点満点の笑顔だな」



久々にお父さんに会えたし、褒めてもらえて、今日はいい日だなー。



「じゃあ、行くか、」



読者の皆様、前言撤回です。


今日からわたしは盟央高校一年生になります。



「盟央高校へ」