あの日から数日経つが、あの日何があったのか陽弥はどうしても思い出せなかった。その事がずっと頭に引っ掛かっていた。

 あの日、何時もの様に大学へ行って帰って来たのか、それとも何かあったのか…。

 あの痣…。

 やっぱり不自然だ…。何かあった気がする。けど何故それを覚えてないのだろう…。

 何かヤバイ事に巻き込まれたのかもしれない。恐怖を体験したら、そこだけ記憶を失う健忘症になる人がいると聞いた事がある。もしかしたらそれなのかもしれない。

 行こうと思っていた場所がある。そこに何かある気がする。そう思い、陽弥は友人が自分の事を見かけたと言っていた場所に来ていた。 

 ん? デジャヴ? このレンガの建物見た事ある気が…この奥……

 たまにあるデジャヴの感覚を味わって、不思議な感覚のまま引き寄せられる様に路地裏へと進んで行く。

 その場を眺めて、まだデジャヴが続いている…と思っていると、

「a2?」

 と、背後から肩に手を置かれ、声を掛けられた。

 ?

 陽弥が後ろを振り返ると、髪の毛を後ろで一つに纏めた人物が、後ろを向いていた。更にその人物の視線の先には、帽子を目深に被った人物が立っている。
 
 と、瞬間、陽弥の身体に痺れと痛みが走り、視界が暗くなった。

 下に向けられた視線は冷たく、帽子は呆れた口調で言葉を吐いた。

「バカ」

 




                                  END