「えっとね、渡辺さん。簡潔に言うとね、 行方不明らしいんだ。君のストーカーの村田」
ふたくち食べた所で、志木さんから思わぬ言葉が飛んでくる。
早苗お姉ちゃんはブッと吹き出し「早いわ」と言って頭を叩いている。

「ま、いいわ。志木君、続けて」
早苗お姉ちゃんはベーグルを食べながら、志木さんに言い放つ。


「んとね、村田行雄‐つまり渡辺さんのストーカーね。一昨年出所してるんだ。その後は精神科に入院してたんだけど、病院抜け出して行方不明になってる」

「はぁ?!何で?!」
私よりも早苗お姉ちゃんが声を荒げる。

「元々、村田家は嫌なスジと繋がりがあるみたいだから、その辺が匿ってんじゃないかな。それに向こうの弁護士も手を焼いている」

「嫌なスジって・・・」

「まぁつまり、元々村田家はそういうとこと関わりがあったわけ。彼の伯父さんで当主の野党幹事長はさすがに切りたがっているんだけど、切るのが反対派がまだ多いんだとさ。
今回の秘書の件も・・・って、これはただの個人的なぼやきだということにしといてね」

完全なオフレコでと付け足して、志木さんは苦笑いしている。