【安藤直人】
胸を射抜かれた涼子が、その場に崩れ落ちる。
未だに尻餅をついている俺の足元に、ゆっくりと横たわった。
やっぱり涼子は、勘づいていた。
俺がわざと負けようとしていることを。
だから「キスをして」と、口づけをねだった。最後の接吻を交わした後、俺の胸を突いて自分が負けるために。
俺を勝たせるために__。
「ありがとう」と涼子は言った。
涙を流しながら。
失格と告げられてもまだ、俺は起き上がることができない。
地面に倒れている涼子を、受け入れることができなかった。
「うそだろ?なぁ、起きろよ」
這いつくばって、涼子の肩を揺すった。
まだ柔らかくて暖かい。
「涼子、早く起きろって」
きっとこれは何かの間違い。冗談かもしれない。タチの悪いサプライズだ。
そこに倒れるのは、俺のはずだった。
俺が「失格」になると決めていたのに__。
どれだけ激しく揺さぶっても、涼子は目を覚まさない。
「涼子‼︎起きろよ‼︎なにしてんだよ!」
どれだけ叫んでも、目を覚まさない。
俺は涼子を抱き抱えると、強く強く抱きしめた。
名前を呼び、言葉にならない叫び声を上げ、空に向かって咆哮を上げる。
どれくらい、そうしていただろう?
ふと気配を感じて、俺は顔を上げた。
そこに__うさぎがいた。うさぎが、俺を見下ろしている。
拳銃を突きつけながら。



