悪魔の運動会



【安藤直人】


俺たちはゴール手前で立ち止まった。


残された時間は、あと一歩。あと一歩で、勝敗が決まる。あと一歩で、この悪魔の運動会が終わるんだ。


涼子が震えている。


俺は、涼子を抱き締めた。


包み込むように優しく、腕の中に抱き締めた。


最後の抱擁だ。


少しずつ強く、壊れてしまうほど強く。


壊してしまいたい。


別れるのなら、永遠の決別を目の当たりにするくらいならいっそ、壊してしまいたい__。


「直人、キスして」


涼子が小さく言った。


ゴールを背にし、その顔を両手で包む。


しばらく見つめあった後、俺はそっと口づけた。


柔らかな唇に。


初めてキスをしたのは、プラネタリウムの帰り道だ。


ずっと機嫌の直らない涼子に、少し強引にキスをした。


怒りながらも、それを受け入れてくれた。強張った体から力が抜け、俺に身を委ねてくれている。そのことがとても嬉しくて__。


涼子の震えが止まった。


手を離しても、唇で繋がっている。


最後まで俺たちは繋がっている。


涙が頬を伝うのが、添えている手でわかった。


また泣かせてしまった__。


でも今から、涼子を先にゴールさせなければならない。


そのことを、気づいてるのだろう。


涼子はいつも、俺のことが分かっている。


それでも、このキスと同じように受け入れようとしているんだ。


ありがとう、涼子。


唇を離すと、俺たちは見つめ合った。