【木崎涼子】
私も、思い出していた。
みんなのことを。みんなの存在を。みんなが確かに存在していたという事実を。
いつも教室は賑やかだった。
いくつものグループに分かれ、違う方向を向いている3年C組。でもなにか1つに打ち込む時は、力を合わせて立ち向かう。そう、運動会のように__。
どうして私たちが選ばれたのだろう?
どうして私たちが競わないといけないのだろう?
どうして私たちが逝かなくてはいけないのだろう?
答えの出ない自問を繰り返す。
いつか、答えは見つかるのだろうか?
もしこの運動会を勝ち抜くことができれば、いつか分かる日が来るのだろうか?
「直人、一緒にゴールしよう」
「そうだな。一緒に」
そう言って私たちは、手を強く握り合った。
その手から、伝わってくる。
直人の思いが。
ドクドクと際限なく、私の体に流れ込んでくる。
たくさんの後悔と責任、ほんのわずかな温かみ。そして様々な感情の中心に、揺るぎなく立つのは贖罪。
私には分かる。
あと数歩で、ゴールだ。
私には分かる。
あと数歩で、別れが来る。
私には分かるんだ。
直人が、私を勝たせようとしていることが。
だから私は__。



