【安藤直人】
他愛もない話をした。
まるで、学校の帰り道のように。
冗談に笑い合い、手を繋いで、このまま家に帰る。
「じゃ、明日」と軽く別れを告げて__。
もう、俺たちに残された時間は、あとグラウンド4分の1しかない。
うさぎと猿が持っている、ゴールテープが風で揺らめいている。
どちらかがテープを切り、どちらかが失格となるんだ。
俺は涼子の手を握り直した。
俺の目を覚ましてくれた、大切な人。何より俺が1番に守りたい人。なにを差し置いても1番に__。
「そういえば、やっと一緒になれた気がする」
そう涼子が言った。
「__そうだな」
こうやって、近くで話し合うこともできなかった。たとえ今も別々の組だとしても。2人のどちらかが生き残るのだとしても、この時間は代え難いものだ。
止まればいい。
2度と動き出すことがなかったとしても、手を繋いだまま、止まってしまえばいいとそう思う。
それはきっと、涼子も同じ。
俺の手を、強く握り直した。
「神様は、私たちを同じ組にしたくなかったみたい」
「ヤキモチ焼いたんだよ」
「神様が?」
「涼子が好きなんじゃないか?」
そんな軽口に、俺たちは笑った。
神様なんて、居るはずがないと思いながら。



