雨がやんで、良かった。
私は心からそう思った。
直人が、涙を拭ってくれたから。
雨に流されてしまうよりずっと、伝えることができた。
「泣かせてごめん」
そう言うと、私の手を取る。
スタートラインに2人で向かい、その手をお互いに強く握りしめた。
「それではスタートして下さい‼︎」
最後の号砲が放たれ、私と直人は走り出した。
ゆっくり、ゆっくり。
決して競うことなく、手を繋いで走る。
「涼子、歩かないか?」
半分も走らないうちに、直人は走るのをやめてしまった。
「でも__」
「前に進みさえすれば、文句は言わないだろ?」
その通りだ、私たちが歩き出してもクレームはつかない。
とにかくゴールをすればいい。
どちらかが勝者となれば、その過程までは問われない
ということ。つまりそれは、どちらかが敗者となる。
一歩一歩が、最後の審判に近づいていく。
一歩一歩が、残された時間を削っていく。
一歩一歩が、別れの時間に迫っていく。
「すごい星が綺麗だな」
不意に、直人が言った。
指差す空には、無数の星が煌めいている。
今まで気づかなかったが、雨が上がり、星空は眩しいほどだった。
「初めてのデート、思い出すな?」
「プラネタリウム?」



