【安藤直人】
何度も何度も、拳を打ちつけた。
皮がめくれても、爪が剥がれても、叩き続けた。
薫はきっと、俺たちの為に裕貴と一緒に__。
それは、俺がやるべきことじゃなかったか?
寺脇リカとの決戦投票で救われたこの命を、差し出すべきじゃなかったか?
それなのに、俺は何も出来なかった。
どこかで、裕貴を仕留めるのを躊躇っていた自分がいた。
いや、それでさえ言い訳なんだ。
俺は意気地なしで、クラスメイト1人守ることさえできない。
打開策もないまま、1人、また1人と消えていく運動会を、ぶち壊すこともできない。
俺は__何もできない。
気づけば叫んでいた。
「俺を失格にしろ‼︎」と。
立ち上がり、心配する涼子を押し退け、校舎に向かって訴える。
「早く失格にしろよ‼︎」
自分の胸を叩き、ここを狙え‼︎と叫んだ。
失格になるのは、薫でも裕貴でもない、この俺だ。
「直人、やめて‼︎」
腕にしがみついてくる涼子を、思い切り突き飛ばす。
流れ弾でも当たったら危ない。
傍らで、美咲が振り返っている。
もう、誰も犠牲にはできない。
「10秒以内に、スタートラインに立って下さい」
「立たなかったらなんだよ⁉︎」
「失格となります」



