「立花さん‼︎走って!」
木崎涼子が私の名を呼んだ。
恋にうつつを抜かす、私の最も嫌いなタイプ。
でも、どんな時でも木崎涼子は自分に投票した。たとえその1票が自分の首を絞めると分かっていても。
私には分からない。分かりたくもない、これまではそう思っていたが、今は少し分かりたいと思う。
それが恋というものなのだろうか?
もし私が尋ねたら、嫌な顔をせずに教えてくれるだろうか?
その機会は__もうなさそうだけれど。
雨の中、ニヤけた顔がわかるまで裕貴は後ろに迫っていた。
それでも私は走らない。
「何やってるのよ‼︎走りなさいよ‼︎」
ただ歩く私に、苛立った声がぶつけられる。
せっかく私が助けてやったのに‼︎と、後に続きそうな樋口美咲の金切り声。
おそらく、私が1番に嫌っていた女。
それは美咲が、私と真逆だからだ。
なんの苦労もしないで、恵まれた容姿を振りかざしている。
挨拶もしなければ、目も合わせない、別の種族。
もったいないことをした。
今、私は痛烈にそう感じる。
なぜなら、美咲は私と似ているからだ。
心の奥に秘めたガッツ、裏打ちされた努力。だだ美咲は自分に正直なだけ。もっと早く言葉を交わしていたら、親しくなれたかもしれない。
私が美咲と?
なんだか可笑しくて、フッと笑ってしまった。



