【立花薫】
もう、ダメだ。
これ以上、走ることができない。
半周先を走る裕貴が、急にスピードを上げるのが分かった。
それが分かってももう、私は走ることができなかった。
スタート地点がザワつく。
裕貴のバトンを受け取ろうという美咲。そこに寄り添う木崎涼子。安藤は身構えている。また、暴走する裕貴を止めようというのだろう。
少し前と同じ状況が、再びやってきた。
でも前と明らかに違うのは、私に気力が残されていないということと__。
「おい‼︎待て‼︎」
安藤が叫んだ。
美咲も涼子もなにか喚いている。
今度は裕貴が、全力で食い止めようとした3人を突破した。
そのまま猛然と追いかけてくる。
「立花‼︎」
安藤の声から、責任が感じられる。
私は正直、あまり好きじゃなかった。そもそも群れるのが好きじゃない。安藤に相原に間宮、クラスをまとめようとする3人を、斜め上から見ていた。
どうせたった1年の付き合いだ。
そこで培われるものなんて、たかが知れている。それなら私は、部活に勤しむ。クラスメイトと仲良しごっこしている暇なんてないし、そんな気は毛頭ない。
それでも認めざるを得ない。
安藤たちの繋がりは、とても固くて強くて、暖かいものだということを。



