「樋口‼︎早く行けっ‼︎」
そんな切迫した声に、思わずきつく閉じていた瞼を開けると__。
グラウンドから外れたところで、安藤と裕貴が取っ組み合っていた。
暴れる裕貴を、安藤が上から押さえつけるように組み敷いているのは、きっと私にぶつかる寸前に飛びかかって食い止めてくれたからだろう。
その傍らに転がっている、ダイナマイトという名のバトン。
私は急いでバトンを拾うと、そのまま駆け出した。
「おい‼︎これは反則じゃねーのかよ⁉︎」
裕貴の抗議は、どうやら認められそうにない。
ホッと胸を撫で下ろして走り出したものの、すぐに立花薫の背に追いついた。
薫はもう、かなり疲れているように見える。
もし、もし私がこのまま追い越せば__?
逆にいうと、追い越さなければ、リレーに終わりはない。
体が雨で冷え、筋肉が固まり、それがフォームを崩して呼吸が乱れる。
このままじゃ、爆弾じゃなくても命が尽きてしまうだろう。
誰かが「失格」にならないことには、終わらない。
少しギアを上げれば、大きな背中はすぐに追い越すことができる。
私は別に、裕貴のように卑怯な手を使うつもりはない。
でもこれまで、そうやって運動会を勝ち抜いてきた。
これは勝負なんだ。
勝つか。
負けるか__。



