なにがなんだか分からない。
私たちが1番、信頼している人の言葉はある意味、私たちの気持ちを代弁していた。
正直な安藤くんらしい。
変に取り繕ったり、見栄を張ったりがないからだ。
「分かっていることは、さっきも言ったようにバスで眠らされ、拉致された。政府が立ち上げた【運動会特別プロジェクト】に俺たち華橋中学の3年C組が選ばれた。運動会で競わせて、将来の官僚を決める為に」
ところどころ、聞き慣れないワードが耳に入る。
平凡で平坦だった人生に、無関係だと思われた【拉致】や【官僚】といった言葉たち。
「そしてラジオ体操が始まって、体操をしなかった森本瞳が失格だと__殺害された」
【殺害】のワードに、女子たちが息を呑む。
あまり授業にも出ずとても中学生には見えない、素行の悪い森本瞳だったが、クラスメイトであるには変わりがない。
その瞳が__撃ち殺された?
「次にいち早く逃げ出した和田翔平が、フェンスで感電死した。学校は四方で囲まれているから多分、逃げ道はない。教室の外にも見張りは立っているし、今のところ外部と連絡も取れない」
安藤くんの口からは、悪い事実しか語られない。
でも私は知っている。
中学1年生の時から彼を見、支えてきた私は知っている。
安藤直人は、誰より頼りになると。



