悪魔の運動会



【樋口美咲】


「明日香、逃げて‼︎」


ただ痛めつけられているのを、黙って見ているしかないのか?


頼みの安藤も「失格」となることを恐れているのか、止めには入らない。それなら私が__。


「ちょっと待ちなさいよ」


「離して‼︎あのままじゃ明日香が殺されてしまう!」


「だから待ちなさいよ‼︎」


私の腕を掴んで止めるのは、立花薫だ。


いつも冷静で血も涙もないような女。だから明日香が黙ってやられていても平気に違いない。同じチームだというのに__それとも、自分以外は全員が敵だと思っているのか?だから、早く失格者を__?


「私、あの子は気づいてると思うのよ」


「気づいてる?一体なにによ?」


「あんた気づいてないの?もし今、あの子が戸田裕貴を追い越せば、すぐにあいつは失格になる。それを狙っている気がするの」


「明日香が__?」


体を丸めて動かない、明日香。


ただ、振り下ろされる暴力をやり過ごしているだけに見える。


でも__明日香は昔、無差別な悪意を乗り越えた強さがある。


もしかして今も、今も、戦おうとしているのか?


それなら「急いで」と、私は呟いた。


明日香、早くして。


早くしないと__。