【伊藤明日香】
あれだけ青かった空が、ウソのように灰色に染まっていた。
山の天気は移ろいやすい。
今にも雨が降ってきそうだ。
雨は嫌い。
私たち紅組の3名は、言葉を交わすこともなくそれぞれが物思いに耽(ふけ)っていた。
自分の分厚い手のひらを、他人の手のように眺める。
太い鉄棒やつり革を握っていた為、小柄な体型には似つかわしくないほど、丸い手をしていた。
嫌いで仕方なかった手を、ギュッとして握り拳を作る。
繰り返し蘇ってくる感覚を潰すように__。
この手で振るったバットの振動が、今にも伝わってきそうだ。
戸田裕貴を叩きのめした。
ひょっとしたら、殺していたかもしれない。
そして気づけばもう、5人しか残っていなかった。
最後の1人まで戦うのだろうか?
もしそうなら、私は勝ち残りたい。
なし得ることができなかった「夢」を、代わりに叶えたいと思う。
1番になることで、返り咲きたい。
あのスポットライトの中に__。



