悪魔の運動会



私はゆっくり立ち上がった。


「相原さん__」


同じく立ち上がった木崎涼子が、今にも泣きそうな顔をしている。


私は失格となった。


樋口美咲が私に入れ、涼子は予想通り自分に入れた。


もし最初に宣言した通り、私が涼子に入れていたのなら彼女が失格となるはず。それが分かっていてあえて、私は無記名投票をした。


安藤くんや間宮くんと、初めての投票で無記名投票を試みた時のように__。


私は自分の手で、私を落としたんだ。


「ありがとう」


改めてそう言うと、彼女の目から零れた涙が頬を伝っていく。


「相原さん、私__」


「あなたのお陰で、なんとか最後まで自分で居ることができた」


これまでと同じ、いつもの相原友子。


みんなのことを1番に、それが安藤くん、ひいてはクラスの為だと信じて疑わない、私。


一瞬だけ見失いかけた自分を、手放さずにすんだ。


自分の手で葬り去ったんだ。


だから、後悔はない。


「じゃ、行くわ」


出来るだけさり気ない風に、私は教室を出た。


何が待ち受けているのかは分からない。


けれど、木崎涼子の背中を見送るよりはずっと、気分は晴れやかだと思う。


私が私らしく、あり続けられたから__。