悪魔の運動会



「__ごめんなさい」


目を伏せて、木崎涼子は謝った。


やっぱり、彼女は投票しなかった。


あれだけ私が言ったにもかかわらず。


あれだけ私が憎しみをぶつけたにもかかわらず。


「ごめんなさい」


再び、謝った。


私を落としたんじゃない。


そうすることも容易く出来たのに、彼女は違った。


私を落とすことより、自分が失格となる選択をしただけ。


殺意を向けられた相手より、自分が傷つく道を選んだだけ。


それだけのことなのに、悲しげに俯いている。


そしてようやく、私には分かったことがある。


これが木崎涼子なんだ。


安藤くんは関係ない。


彼が居ても居なくても、彼女はきっと同じことをする。


彼の為なんかじゃなく、自分自身のために__。


私はそのことを、薄々気づいていながらも、気づかないフリをしていた。


気づきたくなかった。


こんな人には勝てないと思ったから。だから彼が木崎さんを選んだと思い知りたくはないから。


でも__認めなくてはならない。


認めて、受け止めて、私も少しでも近づきたい。それはまだ可能だろうか?


「木崎さん、ありがとう」


そう言って微笑むと、涼子は目を見開いて私を見た。


恐らくびっくりしたんだろう。


涙を流す私を見て__。