悪魔の運動会



【和田翔平】


俺には小さい頃から、いつも両親に言われてきた言葉がある。


【困っている人を見たら、すぐに助けなさい】


そういう大人になりなさいと、言い聞かされて育った。


人間、いざという時に限って体が動かない。どうしようと躊躇している間に、困っている人を助けられなくなるかもしれない。


では、どうすればいいのか?


それには【筋肉】をつけること。そうすれば、頭で考えるより先に、体が動く。勝手に体が動くんだ。


父親は槍投げの選手、母親が重量挙げというスポーツ一家の発想だ。だから翔平も、幼い頃から鍛えさせられた。


中学では陸上部のエースとして活躍している。


ラジオ体操の失格者が【森本瞳】と発表され、裕貴らが放送室に乗り込もうとしたが、なぜか瞳が倒れた。


「__撃たれた」と誰かが言った。


瞳の周りに輪ができ、恐らく血でも流れたのだろう。


女子の悲鳴が上がり、それは瞬く間に伝染していく。


俺はその悲鳴を、かなり離れたところで耳にしていた。


そう__その時にはもう、ここから逃げ出そうと駆け出していたからだ。


頭より先に、筋肉が動いていた。


この場合は「助ける」というより、自分が「助かる」といったほうが合っているが、全速力で校門に走った。