【樋口美咲】


「それでは投票を始めます」


それはどこか、異様な空気に包まれていた。


残るは3名。


私と、相原友子と木崎涼子。


この中から1名が失格となる。


順当に考えれば、相原だろう。私も木崎涼子も、つつがなく最後に繋げた。大きなミスはしていない。


明らかに相原友子は時間がかかり過ぎていた。


お題が何かは分からなかったが、味方に銃を向けて血迷ったとしか思えない。


その隙に紅組にも逆転された。


と突然、その相原が立ち上がる。


「木崎さん、私はあなたに投票するから」


その宣言はある意味、妥当ともいえる。


これまで木崎涼子は無記名投票、すなわち自分にしか投票していない。


それで自分自身が落ちるかもしれない苦境でも、その凜とした姿勢を崩すことはなかった。


けれどそれは、間宮や相原が彼女を守ったから成り立つ構図であって、今回は本当に致命傷となる。


相原が木崎に入れる。そして涼子本人が自分に入れるのなら、それでもう決まり。私の票すら関係がない。


でももし、涼子が無記名じゃなく、相原に投票したら?


事態は逆転するだろう。


そうなると、私の票も生きてくる。


だからちゃんと考えないと__誰を落とすのかを。