カチッ。


虚ろな音が鳴った。


圧倒的に破壊する音でも、そこから始まる音でもない空虚で安い音。けれどそれは、私の中をぶち壊すには充分すぎるほど。


カチッ。


カチッ。


瞬きをしないでフリーズする涼子と、瞬きをするごとに涙が溢れる私。


相反する両天秤は、片方が振り切ってしまっていた。


カチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチ。


何度、引き金を引こうとも、目の前の木崎涼子は消えてくれない。


それでもあなたは、私を信じられる?


私が信頼できますか?


あなたを、撃ち殺そうとした私を。


手の甲で涙を拭い、ピストルを放り投げた。


それでもまだ言い訳が立つ。


お題の通りだと。証明しろと言われたから撃っただけのこと。


だから勝ったじゃない?


冗談でも、こうしなきゃ負けてたんだから__。


けれど、私と木崎涼子の信頼関係は揺らいだ。そこに 私たちを結びつけていた安藤くんは居ない。少なくとももう、私は彼女を信頼していない。


他人じゃない。


安藤直人じゃない。


私自身の問題だ。


それはおいおい、向こうの投票を見届けてから。


そう思っていたのに__。