私は、その場からスッと離れた。
金縛りにあったように動かなかったのに、安藤くんが引いたお題を見たら、呪縛から解放されたんだ。
いや__逆に呪いにかかったともいえるが。
走ることもなく、ただ亡霊のように来た道を戻る。
【好き】ならいい。それなら私は何も異論はなかった。
それがよりによって【信頼】なんて。それじゃ、私が今までやってきたのは、何だったのか?
ひたむきな気持ちを、土足で踏みにじられたような。
それと同時に、見返りを求めずにやっていると信じていた事が、実はそうじゃなかったと思い知った。
すべて、安藤くんの為にやっていただけ。
彼に少しでも認めてもらえるように。
少しでも気に入ってもらえるように。
彼に。
彼に。
彼に__。
「ちょっと一緒に来て欲しいの」
私はそう言って、手を差し出した。
自分の浅ましさは棚に上げ、いつものように微笑んだ。
迷うことなく、笑顔で私の手を握る。
疑うことなんて知らないのは、私を信じているからだろう。
これまでの私を__。
今ならまだ引き返せる。
無かったことにし、潔く負けを受け入れよう。私が失格になればいい。
でも私は、掴んだ手に力を込めた。



