私は、安藤くんが好きだ。
ずっと彼のことばかり見てきた。
彼の為ならばと、泥仕事も買って出た。なにも苦じゃない。彼の支えになるのなら、それは喜びでしかない。
私は、安藤直人が好き。
でも__彼女になりたいわけじゃない。
そりゃ、なれたらと想像した日もあった。そんな大それたことと、自分を叱った日も少なくはない。
下手に思いを告げ、そばに居ることができないなら、ずっとこのままでいい。
それに第1、彼は私なんか見ていない。
彼の目には、木崎涼子しか写っていないのだから。
お似合いの2人だ。
私が付け入る隙なんて、どこにもない。
それでいい。
私は影で、彼をサポートできたら満足だ。
2人で見つめあい、手を繋いで帰っても、私は傷つかなかった。
だって、2人は恋人同士だから。
この私でさえ公認の、理想的なカップルだ。
だから安藤くんがお題を引き、すぐに校内に木崎さんを探しに行った時、きっとお題にはこんな風に書かれているのだと思った。
【1番、好きな人】や【愛している人】なんて。
すぐに姿を思い描かれる、木崎さんがちょっぴり羨ましいと思った。
思ったけれど、そこまでだ。私が許されるのは。それ以上は考えないことを、私は学んでいたから__。
でもお題には、好きでも愛でもなく【信頼】と書かれていた。
私が血まなこになって彼から手に入れた、唯一のものじゃなかったか__。



