【伊藤明日香】
教室に飛び込む前に、私は校庭を振り返った。
美咲はまだ猿の前で立ち尽くしており、なにやら喚いている。
先にお題を引いた時「__なによ、これ?」と呟いていたが、何かは分からない。
構っている暇はない。
私だってなにも、名指しで物が書いてあったわけじゃない。
まるでクイズか謎かけのような__。
教室に入ると、後ろのロッカーを漁る。しかし、どれも空だ。机の周りをまさぐっても、なにも掛かっていない。
隣の教室も、その隣の教室も同じだった。
それもそうか。ここは廃校だ。生徒たちが通っているわけじゃない。
普通の学校なら、当たり前にたくさん溢れている【たくさんの夢が詰まったカバン】が、ここには無いんだ。
引いた瞬間は、美咲と同じでどんなお題だと匙を投げかけたが、それはつまり【ランドセル】のこと。
だから一目散に教室へと向かったが、大誤算だ。
だって、他にそんなカバンなんて__。
諦めかけて廊下に出た時、ランドセルが目に飛び込んできた。
ランドセルを背負っている、うさぎが。
そしてうさぎの瞬きをしない目と、私の目が合った。
「ちょっと!それ貸して‼︎」
駆け寄ってランドセルに手を伸ばす。
美咲が手こずっている間に、少しでもリードを広げないと‼︎
だが、うさぎが__私の手を払いのけた。



