【間宮旬】


俺か直人、どちらかが落ちる。


遅い方が負けの単純明快なルールだ。


だが__これからの競技を大きく左右する分かれ目でもあった。


迷っている暇はない。


全員の中で、俺が1番の俊足だ。唯一、勝負になるのが直人だけだが、その直人にもタイムで下回ったことはない。


よほどのことがない限り、俺が勝つ。


よほどのことが__。


「それではスタートラインについて下さい」


肩を慣らし、手足を回してスタート地点に立った。


ムカデ競争のラインと同じだ。


隣の直人は押し黙って立っている。


「今からそんなに力が入ってると、あっという間に勝負が決まる。走ってる間は、全部忘れないか?」


「忘れる?」


少し驚いた様子で俺を見る。


「そうだ。男と男の勝負。負けても自分が責任を取るだけだ。勝っても負けても恨みっこなし、単純に駆けっこしようぜ」


拳を直人の胸のあたりに突き出す。


「__お前らしいな」


笑った直人が、拳をゴツンと合わせた。


余計な力が抜けたな。ったく、それこそ余計なことしたかもな。でも、ちょっとは勝負にならないと面白くない。


「それでは位置について」


ラインに手を乗せ、膝をつくクラウチングスタート。


でも直人、俺は本気でいくからな。