【久米茜】
私はホッと胸を撫で下ろしていた。
もし音楽が止まったとしても、私が落ちることはない。
なぜなら、私はウサギと同じ内側で踊っていたから。
次に私のパートナーとなるのは、樋口美咲だ。
チラッと振り返ると、強張った表情で顔色も悪い。
どうやら美咲も感じているんだ。ひょっとしたら音が止まるかもしれないと__。
お辞儀をする2人。
くるりと回って、私は美咲を迎えようとした。
「は、離して‼︎」
必死に手を引いているようだが、どうやらウサギが離さないらしい。
ここで終われば、すべてが終わる。
もう、やきもきしなくていい。
自分が落ちるかもと震えながらダンスをすることもない。
一瞬、ほんの一瞬だけ祈った願い事が叶うなんて__。
「離してよ‼︎」
美咲が怒鳴った拍子にウサギが手を離した。1秒でも早く逃げ出したかったのだろう。
けれど力の反動で後ろに倒れそうになる。
「アッ‼︎」と私は反射的に背中に回り込んだが、それより先に、ウサギの手が美咲を引っ張り起こし、そのまま体勢をひっくり返した。
そしてプツリと音楽がやんだ。
私は__うさぎに手を握られていた。
引いても引いても、万力で締め上げたように離れない。
もう2度と、離れない__。
「久米茜、失格」



