【樋口美咲】
ウサギは、3つ後ろに居る。
あと3回転、ちょうど音楽の切れ目だ。
またすぐにダンスが始まればいい。そうしたら安全圏内に突入する。
でも__と、私は思った。
なんだか嫌な予感がする。
それは、背中を文字通り刺すような視線。何度か手を握り合って踊ったが、着ぐるみの中から荒い鼻息が聞こえてきた。
ふと思い出す。
これまでに連れ去られた失格者たち。
ここから出て、何をされているかも分からない。家に帰ったはずなんてない。それなら、この着ぐるみたちが八つ裂きにしようが、誰も分からないんじゃ?
今時の女子中学生なんて、1番のプレミアだ。
可愛らしい動物に扮しているが、中身は腐った大人。
ウサギはもしかしたら、私を狙ってるんじゃないか?
そんな予感めいたものを感じていた__。
回ってお辞儀をし、ウサギの腕の中へ。
私の手を握る力も、だんだんと強くなっている気がする。
右、右、左、左。
輪の中で踊る、みんなの祈りが聞こえてくるようだ。
どうか次で止まりますように。
右、左。
ウサギと足並みを揃え、くるりと回った。
頭を下げ、次のパートナーである久米茜の元へ__。
一刻も早くウサギの手から逃れようと、手を引っ込めるが、冷たく私を見下ろすウサギが離してはくれない。
「は、離して‼︎」



