【樋口美咲】
気持ち悪い。
バカみたいな幼稚なダンス。
お互い争っていたのに、笑いあってお辞儀をして別れる。
私はいたって無表情で踊り続けていた。
けれど円が一周するたびに、露骨に顔をしかめる。
気持ち悪い、と。
この手の視線には慣れているつもりだ。
大の大人が私を舐めるように見る、生々しい視線。
それは全力で無視すると決めている。
それなのに__。
「なんなの?」
面と向かってではなく、手を繋いでいるパートナーから顔を背けて吐き捨てた。
私も馬鹿じゃない。
いくら気持ち悪くても、本人には言わない。いや、いつもなら言ってでも追い払う。
でも今は無理だ。
なぜなら相手は__ウサギだったから。
着ぐるみなので、表情はなにも変わらない。寒気がするくらいの100点満の笑顔だ。
それでも感じる。
その奥から私を見る、熱のこもった眼差しを。
そしてそれは、円を回るごとに強くなっていた。
かといって、どうすることもできない。音楽が終わるまで、踊り続けるだけだ。
永遠に続くかと錯覚するほど、終わる気配は全く感じられないが__。



